大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

名古屋地方裁判所 昭和63年(ワ)3557号 判決

愛知県幡豆郡一色町大字味浜字堤東五一番地四

原告

加藤林作

右訴訟代理人弁護士

三宅正雄

同右

栗宇一樹

右輔佐人弁理士

大滝均

大阪市北区中之島二丁目二番二号

被告

ニチメン株式会社

右代表者代表取締役

日比野哲三

右訴訟代理人弁護士

森本宏

同右

中島健仁

同右

八代紀彦

同右

佐伯照道

同右

西垣立也

同右

山口孝司

同右

天野勝介

豊橋市前田南町一七番地

被告補助参加人

株式会社アミタマシーンズ

右代表者代表取締役

山本善嗣

右訴訟代理人弁護士

富岡健一

右訴訟復代理人弁護士

瀬古賢二

同右

舟橋直昭

右輔佐人弁理士

石田喜樹

四日市市平町八番一三号

被告補助参加人

稲垣製網株式会社

右代表者代表取締役

稲垣昭生

右訴訟代理人弁護士

木村静之

主文

一  被告は、別紙イ号物件目録及びロ号物件目録記載の各漁網を販売してはならない。

二  被告は、その占有に係る別紙イ号物件目録及びロ号物件目録記載の各漁網を廃棄せよ。

三  被告は、原告に対し、金五六五万二〇六〇円及びこれに対する昭和六三年一一月一九日から支払済に至るまで年五分の割合による金員を支払え。

四  原告のその余の請求を棄却する。

五  訴訟費用は、そのうち参加によって生じた部分を二分し、その一を原告の負担とし、その余を被告補助参加人らの負担とし、その余の訴訟費用を二分し、その一を原告の負担とし、その余を被告の負担とする。

六  この判決は、第三項に限り仮に執行することができる。

事実

第一  当事者の求める裁判

一  請求の趣旨

1  主文第一及び第二項と同旨

2  被告は、原告に対し、金一四六一万二八〇〇円及びこれに対する昭和六三年一一月一九日から支払済に至るまで年五分の割合による金員を支払え。

3  訴訟費用は、被告の負担とする。

4  第2項につき仮執行宣言

二  請求の趣旨に対する答弁

1  原告の請求をいずれも棄却する。

2  訴訟費用は、原告の負担とする。

第二  当事者の主張

一  請求原因

1(一)  原告は、次の特許権(以下、そのうち漁網の結節構造の特許権を「本件特許権」といい、その特許発明を「本件発明」という。)を有する。

発明の名称 漁網の結節構造とその編網方法

出願日 昭和五一年一月三〇日

出願公告日 昭和六〇年五月七日

登録日 昭和六一年八月二八日

登録番号 第一三三四七四四号

(二)  本件発明の特許請求の範囲は、次のとおりである。

「たて糸1には、結節に向って上方へ進入する進入脚1aと、進入脚1aに続いてその上方に右回わりに屈曲するループ1bと、ループ1bに続いてその下方に右回わりでかつ、進入脚1aの表側を横切るループ1cと、そして、ループ1cに続いてその上方に退出脚1dとが形成され、よこ糸2には、進入脚1aの右側に並び、かつ、ループ1cの裏側を横切る進入脚2aと、進入脚2aに続いてその上方にループ1bの裏側を横切って左回わりに屈曲するループ2bと、ループ2bに続いてその下方に進入脚1a、ループ1cおよび進入脚2aの裏側を横切った後左回わりに屈曲し、さらに続いて、ループ1bとループ1c間のたて糸1および、進入脚2aとループ2b間のよこ糸2の表側を横切るループ2cと、ループ2cに続いて進入脚1aとループ1b間のたて糸1、ループ2bとループ2c間のよこ糸2および退出脚1dの裏側を横切った後右回わりに反転するループ2dと、そして、ループ2dに続いてループ2bとループ1bを裏側から表側へ貫通する退出脚2eとを形成して構成するか、または、上記と左右対称に構成することを特徴とする漁網の結節構造。」

2  本件発明の構成要件を分説すると、以下のとおりである。

A たて糸1には、結節に向かって上方へ進入する進入脚1aと、進入脚1aに続いてその上方に右回りに屈曲するループ1bと、

B ループ1bに続いてその下方に右回りでかつ、進入脚1aの表側を横切るループ1cと、

C そして、ループ1cに続いてその上方に退出脚1dとが形成され、

D よこ糸2には、進入脚1aの右側に並び、かつ、ループ1cの裏側を横切る進入脚2aと、進入脚2aに続いてその上方にループ1bの裏側を横切って左回りに屈曲するループ2bと、

E ループ2bに続いてその下方に進入脚1a、ループ1c及び進入脚2aの裏側を横切った後左回りに屈曲し、さらに続いて、ループ1bとループ1c間のたて糸1及び、進入脚2aとループ2b間のよこ糸2の表側を横切るループ2cと、

F ループ2cに続いて進入脚1aとループ1b間のたて糸1、ループ2bとループ2c間のよこ糸2及び退出脚1dの裏側を横切った後右回りに反転するループ2dと、

G そして、ループ2dに続いてループ2bとループ1bを裏側から表側へ貫通する退出脚2eとを形成して構成するか、

H 又は、上記と左右対称に構成することを特徴とする

I 漁網の結節構造。

3  本件発明の作用効果は、次のとおりである。

(一) 目ずれがないこと。

(二) 結節にねじれがなく平らであること。

(三) 編網工程数が少なく生産性が高いこと。

(四) 結節に使用される糸量が少なく糸の歩留まりがよいこと。

(五) 結節のかさが小さいので水中の浮遊物が付着せず、漁獲量が大となること。

(六) 収束性のよいこと、すなわち拡げた状態にある漁網を纏める場合に簡単に収束できて、漁網の使用効率を高めるものであること。

4(一)  被告は、業として、別紙イ号物件目録記載の物件(以下「イ号物件」という。)及び別紙ロ号物件目録記載の物件(以下「ロ号物件」という。)を販売し、イ号及びロ号物件を占有している。

(二)  イ号結節及びロ号結節の各構成は、右各物件目録記載のとおりである。

5  本件発明とイ号結節の対比

(一) 構成の対比

(1) 構成要件Aとイ号結節の構成(一)ないし(三)について

イ号結節を構成する糸条体のうち、たて糸Ⅰは、本件発明のたて糸1に、よこ糸Ⅱは、本件発明のよこ糸2に相当し、そのたて糸Ⅰは、少なくとも結節に向かって上方へ進入する進入脚ⅠAを有し、この進入脚に続いてその上方に延び、右回りに屈曲するループⅠBを形成している点で、本件発明のたて糸1の構成1a、1bと同一の構成より成る。

(2) 構成要件Bと構成(四)について

たて糸Ⅰは、ループⅠBに続いて、その下方に延び、かつ、右回りに屈曲し、前記進入脚ⅠAの表側において、たて糸Ⅰを横切ってループⅠCを形成している点で、本件発明のたて糸1の構成1cと同一の構成より成る。

(3) 構成要件Cと構成(五)について

ループ1Cに続いて、その上方に延びる退出脚ⅠDが形成されている点で、本件発明のたて糸の構成1dと同一の構成より成る。

(4) 構成要件Dと構成(六)及び(七)について

漁網の結節を構成するよこ糸Ⅱの進入脚ⅡAは、少なくとも、たて糸Ⅰの進入脚ⅠAの右側に並び、かつ、たて糸ⅠのループⅠCの裏側を横切って延び、該進入脚ⅡAに続いて、その上方のたて糸ⅠのループⅠBの裏側を横切って左回りに屈曲するループⅡBとを形成している点で、本件発明のよこ糸2の構成2a、2bと同一の構成より成る。

(5) 構成要件Eと構成(八)について

ループⅡBに続いて、その下方のたて糸Ⅰの進入脚ⅠA、ループⅠC及びよこ糸Ⅱの進入脚ⅡAの裏側を横切った後、左回りに屈曲し、たて糸ⅠのループⅠBとループⅠCとの間のたて糸Ⅰ及び進入脚Ⅱとよこ糸のループⅡBとの間のよこ糸の表側を横切って延び、ループⅡCを形成している点で、本件発明のよこ糸2の構成2cと同一の構成より成る。

(6) 構成要件Fと構成(九)について

イ号物件の構成は、ループⅡCに続いて、たて糸Ⅰの進入脚ⅠAとループⅠBとの間のたて糸Ⅰ、ループⅡBとループⅡCとの間のよこ糸Ⅱ、及び、退出脚ⅠDの裏側を横切った後、右回りに反転、屈曲し、退出脚ⅠDの表側を横切って延びたループⅡDを形成している点において、本件発明のよこ糸2の構成2dと同一の構成より成る。

(7) 構成要件Gと構成(一〇)について

ループⅡDに続いて、よこ糸ⅡのループⅠBとたて糸ⅠのループⅠBとの二筋の糸条を裏側から表側へ向かって貫通する退出脚ⅡEを形成している点において、本件発明のよこ糸2の構成2eと同一の構成より成る。

以上のとおり、イ号結節のたて糸Ⅰは、進入脚ⅠA、ループⅠB及びⅠC並びに退出脚ⅠDよりなり、しかもこれらは、上述のとおりの順序で構成されているので、本件発明のたて糸1の構成と同一の構成より成るものであり、また、よこ糸Ⅱも、進入脚ⅡA、ループⅡB、ⅡC及びⅡD並びに退出脚ⅡEよりなり、これらは、上述どおりの順序で構成されているので、本件発明のよこ糸2の構成と同一の構成よりなるものである。すなわち、イ号結節は、編網上のたて糸、よこ糸の絡みの関係において、本件発明にかかる漁網の結節構造と一致する。

(二) 作用効果の対比

イ号結節は、本件発明の作用効果と同一の作用効果を有する。

(三) まとめ

したがって、イ号結節は、本件発明の技術的範囲に属し、イ号結節を有するイ号物件を販売する行為は、本件特許権を侵害する。

6  本件発明とロ号物件の対比

(一) 構成の対比

(1) 構成要件Aとロ号結節の構成(一)ないし(三)について

ロ号結節を構成する糸条体のうち、その編網上のよこ糸Ⅱは、少なくとも結節に向かって上方へ進入する進入脚ⅡAを有し、この進入脚に続いてその上方に延び、右回りに屈曲するループⅡBを形成している点で、本件発明のたて糸1の構成1a、1bと同一の構成より成る。

(2) 構成要件Bと構成(四)について

前記編網上のよこ糸Ⅱは、ループⅡBに続いて、その下方に延び、かつ、右回りに屈曲し、前記進入脚ⅡAの表側において、編網上のよこ糸Ⅱを横切ってループⅡCを形成している点で、本件発明のたて糸1の構成1cと同一の構成より成る。

(3) 構成要件Cと構成(五)について

前記ループⅡCに続いて、その上方に延びる退出脚ⅡDが形成されている点で、本件発明のたて糸1の構成1dと同一の構成より成る。

(4) 構成要件Dと構成(六)及び(七)について

漁網の結節を構成する編網上のたて糸Ⅰの進入脚ⅠAは、少なくとも編網上のよこ糸Ⅱの進入脚ⅡAの右側に並び、かつ、編網上のよこ糸ⅡのループⅡCの裏側を横切って延び、該進入脚ⅠAに続いて、その上方の編網上のよこ糸ⅡのループⅡBの裏側を横切って左回り屈曲するループⅠBとを形成している点で、本件発明のよこ糸2の構成2a、2bと同一の構成より成る。

(5) 構成要件Eと構成(八)について

ループⅠBに続いて、その下方の編網上のよこ糸Ⅱの進入脚ⅡA、ループⅡC及び編網上のたて糸Ⅰの進入脚ⅠAの裏側を横切った後、左回りに屈曲し、編網上のよこ糸ⅡのループⅡBとループⅡCとの間の編網上のよこ糸Ⅱ及び編網上のたて糸Ⅰの進入脚ⅠAとループⅠBとの間の編網上のたて糸Ⅰの表側を横切って延び、ループⅠCを形成している点で、本件発明のよこ糸2の構成2cと同一の構成より成る。

(6) 構成要件Fと構成(九)について

ロ号結節の構成は、ループⅠCに続いて、編網上のよこ糸Ⅱの進入脚ⅡAとループⅡBとの間の編網上のよこ糸Ⅱ、ループⅠBとループⅠCとの間の編網上のたて糸Ⅰ、及び、退出脚ⅡDの裏側を横切った後、右回りに反転、屈曲し、退出脚ⅡDの表側を横切って延びたループⅠDを形成している点において、本件発明のよこ糸2の構成2dと同一の構成より成る。

(7) 構成要件Gと構成(一〇)について

ループⅠDに続いて、編網上のたて糸ⅠのループⅠBと編網上のよこ糸ⅡのループⅡBとの二筋の糸条を裏側から表側へ向かって貫通する退出脚ⅠEを形成している点において、本件発明のよこ糸2の構成2eと同一の構成より成る。

以上のとおり、ロ号結節の編網上のよこ糸Ⅱは、進入脚ⅡA、右回りのループⅡB、ⅡC及び退出脚ⅡDよりなり、しかもこれらの各構成は、上述のとおりの順序で構成されているので、本件発明のたて糸1の構成と同一の構成より成るものであり、また、ロ号結節の編網上のたて糸Ⅰも、進入脚ⅠA、ループⅠB、ⅠC、ⅠD及び退出脚ⅠEよりなり、これらの各構成は、上述のとおりの順序で構成されているので、本件発明のよこ糸2の構成と同一の構成よりなるものである。すなわち、ロ号結節は、本件発明における編網上のたて糸をよこ糸に置き換え、編網上のよこ糸をたて糸に置き換えれば、その結節の各構成が、本件発明にかかる漁網の結節構造と一致する漁網の結節であり、その二本の糸の絡みの構造としては本件発明と同一である。

(二) 作用効果の対比

ロ号結節は、本件発明の作用効果と同一の作用効果を有する。

(三) まとめ

しだがって、ロ号結節は、本件発明の技術的範囲に属し、ロ号結節を有するロ号物件を販売する行為は、本件特許権を侵害する。

7  損害

(一)(1) 被告は、昭和六二年七月頃より昭和六三年四月まで、イ号物件約二万反を被告補助参加人稲垣製網株式会社(以下「稲垣製網」という。)等に製造させて、販売したものであり、その総売上高は、金一億五三七六万円を下らない。

(2) 本件発明にかかるロイヤリティは、業界の慣例に従えば、イニシャル・ロイヤリティ(実施料の頭金)が、一〇〇〇万円、ランニング・ロイヤリティ(実施料)は、総販売高の三パーセントである。

(3) そこで、本件発明の実施に対し通常受けるべき金銭の額は、右に従って算出すれば、イニシャル・ロイヤリティは一〇〇〇万円、ランニング・ロイヤリティは総販売額の三パーセントに当たる四六一万二八〇〇円、合計一四六一万二八〇〇円であり、原告は、右同額の損害を受けたものである(特許法一〇二条二項)。

(二)(1) 仮にそうでないとしても、少なくとも、被告が、昭和六三年度(昭和六二年七月より昭和六三年四月まで)において北海道漁業協同組合連合会を通じて販売したイ号ないしロ号物件(ニューダブル結節)の漁網の数量は、一万二八三六反であり、その金額は、五五〇六万八六八〇円である。

(2) また、ロイヤリティについても、少なくとも本件発明にかかるイニシャル・ロイヤリティは、編網機一台につき一〇〇万円、ランニング・ロイヤリティは、販売価格の五パーセントである。

(3) 本件では、被告は、稲垣製網及び長田漁網株式会社(以下「長田漁網」という。)にそれぞれ二台の機械を購入させて、右ニューダブル結節の漁網を編網させ、それぞれ全製品を被告に納入させており、昭和六三年度の販売量は前記のとおりであるから、少なくともイニシャル・ロイヤリティとして機械四台分四〇〇万円及びランニング・ロイヤリティとして二七五万三四三四円、合計六七五万三四三四円が、本件発明の実施に対し通常受けるべき金銭の額に当たる。

8  よって、原告は、被告に対し、本件特許権に基づき請求の趣旨第1項記載の漁網の販売の差止め及び廃棄を求めるとともに、不法行為による損害賠償として一四六一万二八〇〇円及びこれに対する不法行為による結果発生後である昭和六三年一一月一九日から支払済に至るまで民法所定年五分の割合による遅延損害金の支払をすることを求める。

二  請求原因に対する認否

1  請求原因1ないし3の事実は、知らない。

2(一)  同4(一)の事実は、そのうち、被告がロ号物件を販売していることは認めるが、その余の事実は否認する。

(二)  同4(二)の事実は認める(ただし、「たて糸」とは編網上のたて糸であり、「よこ糸」とは、編網上のよこ糸の意味である。)。

3  同5及び6の各事実は否認し、法律上の主張は争う。

4(一)  同7(一)(1)及び(2)の事実は否認し、同(一)(3)は争う。

(二)  同7(二)(1)の事実は認あ、同(二)(2)の事実は否認する。同(二)(3)の事実は否認し、法律上の主張は争う。

5  同8は争う。

三  被告ら(被告及び被告補助参加人両名)の主張

1  明細書記載不備による本件特許権の無効事由の存在

(一) 本件特許請求の範囲には、「退出脚1dの裏側を横切った後右回わりに反転するループ2d」という記載がある。この記載は、文字どおりに解釈すると、「退出脚1dの裏側を右から左へ横切った後、同一平面上において右回りに反転し、再び前記退出脚1dの裏側を左から右へ横切って形成されるループ2d」を意味すると解釈すべきである。

すなわち、本件特許請求の範囲において、糸と糸が交差する場合には必ず「…の表側(裏側)を横切る」と表現され、また糸が紙面と垂直に(立体的に)進む場合には、「裏側から表側へ貫通する」と表現されている。

したがって、よこ糸2が退出脚1dの裏側を右から左へ横切った後、反対の方向、すなわち向きを変えても、「退出脚1dの表側を横切る」旨の記載がない以上、再び退出脚1dの裏側を左から右へ横切るものと考えるほかなく、「退出脚1dの裏側を横切った後右回わりに反転するループ2d」なる記載は、本件特許権の公告特許公報(以下「本件公報」という。甲第二号証)第13図(別紙公報図面第13図)の結節構造を正確に表現しているとは認められない。

右によれば、本件特許請求の範囲の記載によっては、本件公報第13図の結節構造を形成することはできず、本件特許請求の範囲の記載には重大な不備が存在している。

(二) また、ループ2dの形成過程については、本件公報第11図(別紙公報図面第11図)に記載されているが、ここではループ2dは、退出脚1dの表側を通過して、反転して、退出脚1dの裏側を通過して延びている。そして、本件公報4欄二二行の「たて糸1を右側から左側へ巻き掛け」なる記載を、「たて糸1を左側から右側へ巻き掛け」と訂正し、本件公報第9図(別紙公報図面第9図)における下鉤6に巻き掛けるたて糸の巻き掛け方向を左右逆にすると、「ループの下側から進入し、上側に退出する」という結果となり、右第11図の記載に合致するのであって、右文章及び第9図、第12図(別紙公報図面第12図)、第13図の方が誤記ということになり、右第11図が間違っているとはにわかに断定することはできない。

(三) 結局、ループ2dについては、前記(一)の本件特許請求の範囲の記載自体の不備、本件特許請求の範囲及び発明の詳細な説明と第11図との相違等重大かつ明白な瑕疵が存するものである。この瑕疵は、本件特許権の重大な無効事由に該当するものであって、右瑕疵をそのままにして本件発明の技術的範囲を定めることは許されず、したがって、イ号及びロ号結節が本件発明の技術的範囲に属するか否かを認定することもできない。

2  公知技術(飯島結節)による無効事由の存在

本件出願前に頒布された刊行物である特開昭四七-三五三六二号公報記載の第五図(自発手続補正書によるもの。別紙図面二。)には、たて糸とよこ糸からなる漁網の結節構造(以下、右公報記載の編網方法を「飯島方法」といい、それにより作られる結節を「飯島結節」という。)が開示され、右図は、昭和五七年七月二二日発行訂正公報(以下「訂正公報」という。別紙図面三。)により補正されている。右訂正公報記載の第五図の左右を逆転した図面(別紙図面四。なお、本件発明の特許請求の範囲には、「または、上記と左右対称に構成する」と記載され、本件発明と左右対称の結節構造も本件発明の技術的範囲に含まれる。)における結節構造は、本件発明の漁網の結節構造と同一であり、訂正公報による前記補正が要旨の変更ではなく単なる誤記の訂正に過ぎないことからすれば、飯島方法による飯島結節が、昭和四七年一一月二四日に出願公開されたことにより、本件発明は、本件出願前に公知であったか、少なくとも容易に推考が可能であったというべきである。

したがって、公知技術を目的とした本来無効となるべき特許権をもって差止めを請求することは権利の濫用であって許されないか、少なくともその技術的範囲は実施例に限定して解釈されるべきである。

3  イ号物件の販売について

被告は、現在、イ号結節と同一の結節構造を有する漁網を販売していない。被告補助参加人アミタマシーンズ(以下「アミタマシーンズ」という。)が製造した製網機の調整不備により、ロ号物件の一部の結節がイ号結節と同一のものとなる不良品が発生したが、現在は、結節構造はすべてロ号結節の結節構造を有するに至っている。

また、ロ号結節の漁網の中に、イ号結節が混入する比率は極めてわずかであって、いわば誤差の範囲におさまるものであるから、右混入の事実をもって、本件侵害の成立を主張することは許されないというべきである。

4(一)  イ号結節及びロ号結節は、本件発明の技術的範囲に属さない。

仮に、本件特許権が有効であるとしても、前記1(一)で述べたように本件特許請求の範囲の「退出脚1dの裏側を横切った後右回わりに反転するループ2d」との記載は、退出脚1dの裏側を横切った後、反転すなわち反対の方向に向きを変えて退出脚1dの裏側を通過して延びていると考えるべきである。とすれば、イ号結節及びロ号結節は、本件発明の技術的範囲に属さない。

(二)  ロ号結節は、本件発明の技術的範囲に属さない。

(1) 本件発明とロ号結節では、結び目の位置と構造が相違する。

本件発明の結び目は、結節におけるたて糸の進入脚の左側に存在している。すなわち、たて糸退出脚1dによこ糸ループ2dが絡まるように構成されている。これに対して、ロ号結節においては、最終の結び目は結節におけるたて糸の進入脚の右側に存在している。すなわち、よこ糸退出脚ⅡDにたて糸ループⅠDが絡まるように構成されている。結び目が結節の左右いずれに構成されるかは結節の構造の基本部分であるところ、本件発明の特許請求の範囲には、「または、上記と左右対称に構成する」と記載されているが、本件発明とロ号結節が左右対称でないことは明白である。

そもそも、特許発明の技術的範囲は、特許請求の範囲の記載に基づいて定められるべきところ(特許法七〇条)、本件特許請求の範囲には、たて糸1とよこ糸2として糸の種類が明確に限定して記載され、たて糸とよこ糸とが単なる糸の呼称であるとか、両者を自由に置き換えてもよい等の記載はどこにもない。

また、本件特許請求の範囲には、たて糸1とよこ糸2が相互に共働して結節構造を形成することが詳細に記載されており、右記載は、製法あるいは作用の記載にほかならない。特許出願人において、かかる事項を特許請求の範囲に記載して、その記載のままで特許を受けた以上、特許請求の範囲における作用あるいは製法に関する構成要件を除外して考察することはできないものであり、たて糸とよこ糸の区別を度外視して本件発明の権利範囲を拡張して解釈することは許されない。

したがって、本件発明とロ号結節では、結び目の位置と構造が相違するというべきである。

(2) 本件発明とロ号結節は、漁網の製造過程、作用効果が相違する。

漁網を製造する過程においては、たて糸とよこ糸とでそこにかかるテンション(糸にかかる力)は全く相違する。たて糸にはよこ糸が巻きつくことによって結節が構成されていくものであり、テンションは製網機の機械構造上たて糸の方に大きくかけることができる。よこ糸は、一定重のオモリにより糸の張力が保たれているに過ぎず、目締めに十分な力をよこ糸にかけるのは構造上無理である。

そして、巻きついた糸の方に大きな力をかけることによって結節はより強固なものとなるのであるから、大きなテンションをかけることができるたて糸がよこ糸に巻きついているロ号結節の方が本件発明よりも強固な結節を形成できる。

(3) 以上(1)及び(2)によれば、ロ号結節は本件発明の技術的範囲に属さない。

四  被告らの主張に対する原告の認否及び反論

1(一)  被告らの主張1(一)は争う。

本件公報第13図には、たて糸の退出脚1dに絡まってよこ糸の退出脚2dが右回りに反転しているのであり、右図面を参酌して本件特許請求の範囲を読めば本件発明は右趣旨のように十分理解できるものである。

(二)  同1(二)は争う。

本件公報第11図の記載は、誤記であることが客観的に明らかであり、訂正するまでもなく、特許請求の範囲の認定に当たってその点が当然考慮されるべきである。すなわち、第11図では、ループ1b、2bの左側で、糸1cから1dに連なるループと、糸2cから2dに連なるループの部分の上下関係のうち、糸1cから1dに連なるループが、糸2cから2dに連なるループの下側から進入し、上側から退出しているが、これは、糸2cから2dに連なるループの上側から進入し、下側に退出すると逆に図解されるべきものであった(訂正後の第11図は、別紙図面一のとおりである。)。このことは、本件公報の第12図及び第13図の記載との整合性をたどれば明らかであるし、編網方法に関しての図解である第9図及び第10図の工程をたどって、たて糸1をループ1b、2bの間を通って引き込むことによっても明らかというべきである。さらに、本件公報4欄第二〇ないし二二行の「ループ1b、2bを貫通して止まった下鉤6に糸振り4のたて糸1を右側から左側へ巻き掛け」の記載からしても同様である。

2  同2は争う。

訂正公報の第五図が、昭和五七年七月二二日当時、漁網の結節構造として編網可能かどうか疑問である上、仮に、結節ができたとしても、それは各ループが二か所で交差状態を呈することになるし、また、飯島方法の明細書添付の第一図において、巻鈎(上鈎)を図示矢印どおり一回転させたとしても、本件発明におけるループ1cとループ2aのような位置関係とはならないのであって、結局本件発明の結節構造とは同じものではないというべきである。

さらに、被告のいうように、仮に、訂正公報第五図が明白な誤記であれば、それはそもそも特許法上許されるべき補正ではないのであって、特許法六四条に違反してされた補正として、特開昭四七-三五三六二号公報の状態、すなわち、補正がなかった状態で特許がされたものとみなされることになるというべきである。

右によれば、被告らが主張する訂正公報第五図は、昭和五七年七月二二日前に公然知られていたことにはならないというべきである。

3  同3の事実は否認し、主張は争う。

被告が販売する漁網には、かなりの割合のイ号結節が混在しているものであり、誤差の範囲におさまるものではない。

4(一)  同4(一)は争う。

反論については、前記1(一)に同じ。

(二)  同4(二)(1)及び(2)は争う。

本件発明は、物の発明の範疇に属する漁網の結節構造に関する発明であり、物の発明にあっては、どのような方法でその物が作られようが、その結果としての物はその発明の技術的範囲に属するというべきである。そして、漁網の結節構造におけるたて糸、よこ糸は、結節自体から定まるべき概念であり、必ずしも編網方法上の名称と一致すべき必然性はないというべきである。

被告らは、編網上のたて糸とよこ糸を置き換えたロ号結節は、本件発明と構成を異にする旨主張するが、出来上がった結節構造は同一である。また、原告の製作する編網機ではよこ糸にも十分強い力を掛けることができるのであり、結節強度としてもイ号結節もロ号結節も全く差がなく、作用効果の点においても全く差異はない。

したがって、ロ号結節は、本件発明と同一であるか、同一ではないとしても類似であって、いずれにしても本件発明の技術的範囲に属するというべきである。

第三  証拠

本件記録中の書証目録及び証人等目録の記載を引用する。

理由

一  請求原因について

1  請求原因1ないし3について

成立に争いのない甲第二号証及び弁論の全趣旨によれば、請求原因1ないし3の事実を認めることができる。

2(一)  被告らは、本件特許請求の範囲の「退出脚1dの裏側を横切った後右回わりに反転するループ2d」なる記載には不備が存し、右瑕疵をそのままにして本件発明の技術的範囲を定めることは許されない旨主張する(被告らの主張1(一)(三))。確かに、右記載においてはループ2dが退出脚1dの裏側を横切ることを要件としているだけで両者をどのように交差させているかについては特段の限定はされてはいないかのようである。しかしながら、本件特許請求の範囲には、ループ2dは、ループ2cとループ2eとの間にあって退出脚1dの裏側を横切るものであること、その後右回りに反転してループ2bとループ1bを裏側から表側に貫通するループ2eに続くことが明記されており、右記載においては、ループ2dが退出脚1dの裏側を横切った後、退出脚1dの表側を横切って右回りに反転すると解しなければ、ループ2dに関する右記載は結節構造との関係において意味を有しないものになってしまうのであるから、右記載自体においてループ2dと退出脚1dの関係は、ループ2dが退出脚1dの裏側を横切った後、退出脚1dの表側を横切って右回りに反転するものと十分理解できるというべきである(なお、前掲甲第二号証によれば、完成された結節構造である本件公報第12図及びそれを解きほぐした第13図(本件公報第4欄三三ないし三五行)の記載においてループ2dが退出脚1dの裏側を横切った後、退出脚1dの表側を横切って右回りに反転することが示されており、これを参酌すれば、右は一層明らかである。)。

被告らは、糸と糸が交差する場合には、特許請求の範囲の他の箇所の記載では必ず表又は裏の関係が明記されており、この記載がない以上、再び退出脚の裏側を左から右へ横切るものと考えるほかないと主張するが、糸と糸の交差の関係が特許請求の範囲全体を通して統一された表現で記載されることが望ましいとしても、発明の構成が当業者にとって理解できる程度の明瞭なものであれば、統一的な表現でないとしてもその記載に不備があるということはできないというべきである。

そして、本件においては、右に判示したように、ループ2dと退出脚1dの関係は、ループ2dが退出脚1dの裏側を横切った後、退出脚1dの表側を横切って右回りに反転するものと理解できるので、統一的な表現がされていないからといって本件特許請求の範囲に記載不備があるとはいえず、被告らの主張には理由がない。

(二)  また、被告らは、本件特許請求の範囲の記載及び発明の詳細な説明と本件公報第11図に重大な相違があり、右瑕疵をそのままにして本件発明の技術的範囲を定めることは許されない旨主張する(被告らの主張1(二)(三))。

前掲甲第二号証によれば、本件公報第11図のループ形成に関する明細書の記載においてループ2dと退出脚1dとの関係は、単に「ループ2dに締められたたて糸1の退出脚1d」(公報第4欄二六ないし三二行)とされているのみであり、両者の上下関係については明示的な記載がされていない。しかし、同号証によれば、本件公報第12図が完成された結節構造であることが明記されており、それを解きほぐした状態を示す本件公報第13図の構造が本件発明の一実施例の結節構造であると言うべきであるから、実施例の製造工程説明図についても、最終形態である第12図(第13図)を基本として考慮すべきである。したがって、ループ2dと退出脚1dとの上下関係についても、第12図(第13図)を基準に考えるべきであって、第12図に記載されているように、ループ2dが退出脚1dの上側(表側)にある状態が実施例の正しい形態であり、そしてそれが本件特許請求の範囲の記載とも合致する。そうすると、その前工程である第11図におけるループ2dと退出脚1dの関係の記載は明白な誤記と認められる。

そして、右誤記は本件発明の技術的範囲を定める上で何ら障害となるものではなく、この点に関する被告らの主張は理由がない。

3(一)  さらに、被告らは、本件出願前に頒布された刊行物により、本件発明は出願前公知であったか、少なくとも容易に推考が可能であったとして、本件特許権による差止めは権利濫用であって許されないか、少なくともその技術的範囲は公報記載の実施例に限定して解釈されるべきである旨主張する(被告らの主張2)。

(二)  まず、特許法二九条一項三号に規定する刊行物とは、同号の文言から明らかなように、特許出願前に頒布された刊行物であるから、本件発明の新規性、進歩性を考慮する上で、本件特許権の出願後に頒布された訂正公報を考慮に入れる余地はない。

(三)  そこで、右の点を前提として、本件出願前に頒布された飯島方法の公開公報記載を検討するに、被告らは、本件発明と飯島結節を公開公報に記載されたままの事項ではなく、左右を逆転させたもので対比しようとしているが、その点は暫く措くとしても、成立に争いのない乙第一号証の一〇によれば、飯島結節は、その公開公報記載の図面では、よこ糸の進入脚2aがたて糸のループ1cの上側から交差している(別紙図面二参照。)ことが認められるから、この点において既に本件発明の構成とは相違しているというべきである(また、公開公報の記載からは、飯島方法による結節が右図面とは異なり本件発明と同じ構成のものであると認めることはできない。)。

そして、前掲甲第二号証によれば、本件発明は、「ループ1cとループ2cとはほぼ平行していて、脚1aと脚2aとがともに平行している二個のループの内側に挟まれるように構成されているので、脚1aと脚2aとは収束性が良く、従って網全体としても収束性が良いので網の整理が簡単で、使用効率が向上する利点がある。」(本件公報第5欄三ないし九行)という特有の効果を奏するものであることが明示されていることが認められる。つまり、「ループ1cの裏側を横切る進入脚2a」という構成要件が本件発明の必須の要件であるとして、これに対応する作用効果についても明示されているのであるから、この要件を欠く飯島結節は、本件発明の結節とは明らかに異なる。また、本件発明が飯島結節に基づいて容易に推考可能なものであるとすることもできない。

したがって、被告らの前記主張は理由がない。

4  請求原因4について

(一)  同4の事実のうち、被告が、ロ号物件を販売していること及びイ号結節及びロ号結節の構成については、当事者間に争いがない(たて糸、よこ糸の定義がいかなる意味を持つかについては、後記6(二)において判断する。)。

(二)  被告が、イ号物件を業として販売しているかにつき検討する。

証人古谷博の証言により成立の認められる甲第九号証の二及び第一〇号証、証人古谷博の証言及び弁論の全趣旨により被告製品であることが認められる検甲第三号証の一及び二によれば、アミタマシーンズが製造し、被告が販売した漁網につき、平成元年一二月において、その一部を切り取って調査した結果、一五四個の結節中、四五個のイ号結節が混入していたこと、同様にアミタマシーンズが製造し、被告が販売した漁網について平成二年二月に調査したところ、身網部分については、一二六個の結節中、六六個のイ号結節が、耳部分については、結節総数四八個中、三一個のイ号結節が混入していたこと、検甲第三号証の一、二として提出された被告製品においてもイ号結節が多数混入していることが認められ、右各事実によれば、被告が販売するロ号結節の漁網の結節中にイ号結節が少なからず混入していたものと認められる。

被告らは、ロ号結節の漁網の中にイ号結節が混入する比率は極めてわずかであって、いわば誤差の範囲におさまるものであるとし、これを裏付けるものとして報告書(丙第九、第三三号証)を提出しているが、右のとおりイ号結節が多量に混入した漁網が存在する以上、右報告書は採用することができないというべきである。

また、被告らは、右混入は、製網機の調整不備により一部の結節が本件発明にかかる結節と同一のもの(イ号結節)となる不良品が発生したものであるとし、現在は、製網機の調整により、結節構造はすべてロ号結節の結節構造を有するに至っているとするが、前掲甲第二、第一五、第一六号証、証人山本要人の証言並びに弁論の全趣旨によれば、イ号結節とロ号結節とは、その編網工程においても最終段階の一部の工程が異なるに過ぎず、しかも編網機の部材の調整如何により容易に本件発明にかかる結節が発生するものであること、本件発明にかかる結節が多量に混入した漁網が販売されていたことが認められ、これらの事実によると、被告が業としてイ号物件を販売していると認めるのが相当であり、また、今後もイ号物件を販売するおそれがあるものと認められる。

(三)  以上によれば、請求原因4の事実はこれを認めることができる。

5  請求原因5(本件発明とイ号結節の対比)について

(一)  本件特許請求の範囲の記載及び別紙イ号物件目録の記載を対比すると、本件発明とイ号結節とは同一の構成であることが認められる。

なお、被告らは、本件特許請求の範囲第一項の「退出脚1dの裏側を横切った後右回わりに反転するループ2d」との記載は、退出脚1dの裏側を横切った後、反転すなわち反対の方向に向きを変えて退出脚1dの裏側を通過して延びていると考えるべきであり、したがってイ号結節は本件発明の技術的範囲に属さない旨主張する(被告らの主張4(一))が、前記2で判断したとおり、ループ2dと退出脚1dの関係は、ループ2dが退出脚1dの裏側を横切った後、退出脚1dの表側を横切って右回りに反転するものと理解できるのであるから、被告らの右主張はその前提を欠き、失当である。

(二)  右に判示したように、本件発明とイ号結節は同一の構成であるから、その作用効果も同一であると推認することができる。

(三)  右によれば、イ号結節は本件発明の技術的範囲に属し、イ号結節を有するイ号物件については、イ号結節が混入するものを含め、これを販売することは本件特許権を侵害するというべきである。

6  請求原因6(本件発明とロ号結節の対比)について

(一)  本件発明の構成要件とロ号結節の構成を比較すると、ロ号結節は、本件発明の特許請求の範囲の記載において、よこ糸をたて糸、たて糸をよこ糸と置き換えて表示した構成となっていることが認められる(したがって、ロ号結節に関する被告の主張4(一)については、前記5(一)と同様、その前提を欠き、失当である。)。

(二)  そこで、次に、右のような構成となっているロ号結節が本件発明の技術的範囲に含まれるか否かを判断する前提として、本件発明の特許請求の範囲に記載された「たて糸」及び「よこ糸」という語の意義について検討する。

まず、前掲甲第二号証、原告本人尋問の結果と弁論の全趣旨によると、一般に、漁網は編網機により製造されるものであり、その結節は、同種・同質の二本の糸の絡み合いにより形成されていること、「たて糸」及び「よこ糸」の語は、漁網の編網に際して、編網機の構造・編網工程との関係で、その同種・同質の二本の糸を区別する場合に用いられるものであること、その結果、編網工程においては、二本の糸は別異のものとして明確に区別されていることが認められる。

また、前掲甲第二号証によると、本件発明は、漁網の結節構造の編網方法に関する発明と併合出願され、本件公報の特許請求の範囲の2には、その方法の発明(以下「本件方法の発明」という。)の特許請求の範囲が記載されて、そこにも、たて糸、よこ糸という語が用いられていること、また、本件公報の発明の詳細な説明の欄には、両発明について、たて糸、よこ糸という語を用いて説明がされていることが認められる。

そうすると、本件発明の特許請求の範囲における「たて糸」「よこ糸」の語は、両発明に共通の語、すなわち、編網上の「たて糸」「よこ糸」の趣旨で使用されているものと解すべきであり、その結果、本件特許請求の範囲の記載においては、「たて糸」をよこ糸に、「よこ糸」をたて糸に置き換えたロ号結節のような構成の結節構造は明示的には表示されていないというべきである。

(三)  しかしながら、本件発明は、「漁網の結節構造」という物の発明であるところ、漁網の結節構造は、二本の糸の絡み合いにより形成され、それ自体からは、いずれの糸が編網上の「たて糸」「よこ糸」であるかを区別することができない性質のものであるから、一方の糸を「たて糸」、他方の糸を「よこ糸」と記載して結節構造が表示されている場合には、編網機による編網方法さえあれば、当然に、その「たて糸」をよこ糸、その「よこ糸」をたて糸に置き換えて編網した結節構造とそのような結節からなる漁網もありうることになる(ちなみに、前掲甲第二号証、原告本人尋問の結果と弁論の全趣旨によると、漁網は、一般に、二本の糸のうちいずれが編網工程上のたて糸、よこ糸であるかを区別することなく使用されていることが認められる。)。

しかも、本件発明の特許請求の範囲の記載においては、「たて糸」「よこ糸」という編網工程上の用語により二本の糸が特定されていることを除けば、その結節構造を示す上で編網工程や編網方法による限定は何ら付されていない(この点は、本件公報に記載されている本件方法の発明の特許請求の範囲と対比すれば、明らかである。)上、本件公報の発明の詳細な説明の欄には、本件発明は、同一出願人の出願に係る従来の漁網の結節構造が有していた、〈1〉目ずれがないこと、〈2〉結節にねじれがなく平らであること、〈3〉編網工程数が少なく生産性が高いこと、〈4〉結節に使用される糸量が少なく歩留りが良いこと、〈5〉結節のかさが小さいので水中の浮遊物が付着せず、漁獲量が大となるという各特徴を受け継ぎ、かつ、そのうち〈3〉ないし〈5〉の特徴をさらに向上するのに加えて、〈6〉収束性の良い漁網を提供すること、すなわち、拡げた状態にある漁網を纏める際に簡単に収束できて漁網の収束効率を高めるものである旨記載されているが、いずれの特徴も、二本の糸の絡み具合(配置関係)から生ずるものであり(〈3〉の特徴も、本件発明との関係では、結節構造における糸の絡み具合により他の結節構造と比較して編網工程数が少なくなるとの趣旨のものと解される。)、本件公報においては、漁網の結節構造につき、二本の糸の一方が編網上のたて糸であり、他方が編網上のよこ糸であることに由来する作用効果は開示されていない。

そうすると、本件発明の特許請求の範囲の記載のように、編網工程上の語を用いて、結節構造を形成する二本の糸のうち、一方を「たて糸」、他方を「よこ糸」と特定して漁網の結節構造を表示すれば、それによって、当業者であれば、直ちに、明示的に表示された内容の結節構造のほか、その「たて糸」をよこ糸、「よこ糸」をたて糸に置き換えて編網した結節構造を想起することができるというべきである。

(四)  ところで、特許発明の技術的範囲は、特許請求の範囲の記載に基づいて決定すべきところ(特許法七〇条一項)、右に判示したところによると、本件特許請求の範囲の記載においては、「たて糸」「よこ糸」の語が実質的には「一方の糸」「他方の糸」の意味で使用されており、その結果、本件特許請求の範囲の記載においてロ号結節のような構成の結節構造も黙示的に表示されていると認めることができ、また、本件公報の発明の詳細な説明の欄においては、そのような結節構造の作用効果も併せて開示されていると認められるから、本件発明の技術的範囲には、ロ号結節のような構成の結節構造も含まれるものと解するのが相当である(原告において、本件特許請求の範囲に明示的に記載した範囲に限定して本件特許権を取得したとすべき特段の事情を認めるに足りる証拠はない。)。

したがって、ロ号結節は、本件発明の技術的範囲に属するというべきであり、ロ号結節を有するロ号物件を販売することは、本件特許権を侵害するというべきである。

(五)  なお、弁論の全趣旨によると、ロ号結節は、前示の本件発明の作用効果と同一の作用効果を有することが認められるので、仮に、被告らの主張するようにロ号結節がイ号結節より強固な結節であり、あるいは、ロ号結節に本件発明の前示作用効果以外の作用効果があったとしても、ロ号結節が本件特許権を侵害していることに変わりはない。

7  請求原因7(損害)について

(一)  請求原因7(二)(1)の事実は当事者間に争いがなく、これを超えるイ号物件及びロ号物件の販売がされた事実を認めるに足りる証拠はない。

(二)  実施料相当額について(請求原因7(一)(2)、同7(二)(2))

原本の存在及び成立に争いのない乙第六号証、証人楫西洋之助の証言により成立の認められる乙第七ないし第一〇号証、第一一及び第一二号証の各一、二、成立に争いのない丁第一及び第二号証、証人古谷博、同稲垣昭生及び同楫西洋之助の各証言によれば、一般に、漁網の製造方法等の特許権の実施許諾は、特許権者と漁網の製造業者との間で行われており、実施料は、編網機械設置の際に一台当たり何円という定めによりイニシャル・ロイヤリティを支払い、かつ、製品の販売金額に応じてランニング・ロイヤリティを支払う方法が採られていること、昭和六三年当時における桃井製網株式会社の有する漁網の製造方法に関する特許権の実施許諾についてのロイヤリティは、イニシャル・ロイヤリティが機械購入時に一〇〇万円であり、ランニング・ロイヤリティは、昭和五七年七月以降メーカーの売上高の一パーセントであること、函館製網船具株式会社の保有する特許権に係るユーノットについては、イニシャル・ロイヤリティが機械購入時に一〇〇万円で、ランニング・ロイヤリティは、昭和六三年九月一日から平成元年八月三一日までの分につき、年間一〇〇万円という上限を設定してはいたが、売上高の三パーセントで、それ以前は、同じく年間一〇〇万円の上限を設定していたが、売上高の五パーセントであったことが認められ、他に右認定を左右するに足りる証拠はない。以上の事実に弁論の全趣旨を総合すれば、昭和六三年当時の本件発明について通常受けるべき実施料としては、イニシャル・ロイヤリティとして、編網機械一台につき一〇〇万円、ランニング・ロイヤリティとして、漁網の売上高の三パーセントと認めるのが相当である。

(三)  請求原因7(二)(3)について

証人楫西洋之助の証言により成立の認められる乙第一四号証、証人山本要人、同古谷博、同稲垣昭生及び同楫西洋之助の各証言並びに弁論の全趣旨によれば、被告に納入するニューダブル結節の漁網を編網するために稲垣製網及び長田漁網は、アミタマシーンズからそれぞれ二台ずつ編網機を購入したこと、稲垣製網及び長田漁網は、編網したニューダブル結節の漁網を被告に納入(稲垣製網については全量納入)していたこと、被告は、北海道漁業協同組合連合会との間で右漁網について値決めをし、その全量を右連合会に納入していたこと、被告と稲垣製網は、漁網の販売について昭和三五年頃から提携を行っていたこと、長田漁網は現在も被告に対してニューダブル結節の漁網を納入していること、以上の事実が認められる。右によれば、被告は、稲垣製網及び長田漁網にそれぞれ二台の機械を購入させて、ニューダブル結節の漁網を編網させ、その製品を被告に納入させていたものと認めることができる。

したがって、被告による本件特許権の侵害行為について、原告が本件発明の実施に対し通常受けるべき金銭の額に相当する額の金銭は、イニシャル・ロイヤリティとして機械四台分四〇〇万円及び昭和六三年分のランニング・ロイヤリティとして漁網の販売金額の三パーセントに当たる一六五万二〇六〇円(一円未満切り捨て)とするのが相当である。

二  結論

以上の次第であるから、原告の請求は、イ号物件及びロ号物件の販売の差止め及び廃棄並びに不法行為による損害賠償として五六五万二〇六〇円及びこれに対する不法行為の結果発生後である昭和六三年一一月一九日から支払済に至るまで民法所定年五分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由があるから右の限度でこれを認容し、その余は失当であるからこれを棄却することとし、訴訟費用の負担につき、民事訴訟法八九条、九二条ないし九四条を、仮執行の宣言につき同法一九六条をそれぞれ適用して、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 岡久幸治 裁判官 後藤博 裁判官 入江猛)

イ号物件目録

別紙イ号図面及びイ号結節説明書記載の結節構造を有する漁網(商品名タイ・ナイロン。イ号結節が混入するものを含む。)

イ号図面

〈省略〉

〈省略〉

イ号結節説明書

一 イ号結節

1 別紙イ号図面の説明

第1図ないし第3図は、イ号結節の構造を示すもので、そのうち、第1図は、漁網の部分図、第2図は、結節の一単位を拡大して示したものであり、第3図は、これを解きほぐした状態を示したものである。

2 各図の符号は、それぞれ、次のとおりイ号結節の各部所を示す。ⅠAは、たて糸の進入脚、ⅠB、ⅠCは、たて糸のループ、ⅠDは、たて糸の退出脚、ⅡAは、よこ糸の進入脚、ⅡB、ⅡC、ⅡDは、よこ糸のループ、ⅡEは、よこ糸の退出脚である。なお、たて糸とは、編網機のいわゆるたて糸部分に掛けられる糸を、よこ糸とは、編網機のいわゆるよこ糸部分に掛けられる糸をいい、右回り、左回りとは、たて糸の進入(延伸)方向から見ての回転方向をいい、上方、下方及び表側、裏側とは、添付図面第三図における上方、下方及び表、裏を基準にしていう。左、右も同様である。

(一) たて糸には、進入脚ⅠA、ループⅠB、ⅠC及び退出脚ⅠDが形成されている

(二) 前記進入脚ⅠAは、結節に向かって、上方へ進入している

(三) 前記ループⅠBは、前記進入脚ⅠAに続いて、その上方へ延び、右回りに屈曲している

(四) 前記ループⅠCは、前記ループⅠBに続いて、その下方に右回りに屈曲し、かつ、前記進入脚ⅠAの表側を横切って延びている

(五) 前記退出脚ⅠDは、前記ループⅠCに続いて延び、その上方に形成されている

(六) よこ糸には、進入脚ⅡA、ループⅡB、ⅡC、ⅡD及び退出脚ⅡEが、それぞれ形成されている

(七) 前記進入脚ⅡAは、たて糸の進入脚ⅠAの右側に並び、かつ、たて糸のループⅠCの裏側を横切って延び、前記ループⅡBは、前記進入脚ⅡAに続いて、その上方のたて糸のループⅠBの裏側を横切って左回りに屈曲して形成されている

(八) 前記ループⅡCは、前記ループⅡBに続いて延び、その下方のたて糸のループⅠC、たて糸の進入脚ⅠA及びよこ糸の進入脚ⅡAの裏側を横切った後、左回りに屈曲し、さらに続いてたて糸のループⅠBとたて糸のループⅠCとの間に延びるたて糸及びよこ糸の進入脚ⅡAとよこ糸のループⅡBとの間に延びるよこ糸の表側を横切っている

(九) 前記ループⅡDは、前記ループⅡCに続いてたて糸の進入脚ⅠAとたて糸のループⅠBとの間に延びるたて糸、よこ糸のループⅡB、ⅡCの間に延びるよこ糸及びたて糸のループⅠCとたて糸の退出脚ⅠDとの間に延びるたて糸の裏側を横切った後、右回りに反転し、さらに、たて糸の退出脚ⅠDの表側を横切って延びている

(一〇) 前記退出脚ⅡEは、よこ糸のループⅡDに続いてよこ糸のループⅡB及びたて糸のループⅠBのそれぞれ裏側から表側に貫通して形成されている

ことより成る結節構造。

ロ号物件目録

別紙ロ号図面及びロ号結節説明書記載の結節構造を有する漁網(商品名タイ・ナイロン)

ロ号図面

〈省略〉

〈省略〉

口号結節説明書

一 ロ号結節

1 別紙ロ号図面の説明

第1図ないし第3図は、ロ号結節の構造を示すもので、そのうち、第1図は、漁網の部分図、第2図は、結節の一単位を拡大して示したものであり、第3図は、これを解きほぐした状態を示したものである。また、第4図は、右第3図を裏(反対面)から見たものである。

2 漁網結節の一単位を解きほぐした状態で、これを拡大して示すと、ロ号結節は、以下の構成を有する。

(一) たて糸Ⅰには、進入脚ⅠA、ループⅠB、ⅠC、ⅠD及び退出脚ⅠEの各要件が構成されていること。

(二) 前記進入脚ⅠAには、結節に向って上方に進入していること。

(三) 前記ループⅠBは、前記進入脚ⅠAに続いて、その上方へ延び、右回りに屈曲していること。

(四) 前記ループⅠCは、前記ループⅠBに続いて、その下方に右回りに屈曲し、かつ、前記進入脚ⅠAの表側を横切って延び、さらに上方に向って右回りに屈曲していること。

(五) 前記ループⅠDは、前記ループⅠCに続いて、進入脚ⅠAの裏側を右に横切り、続いて前記ループⅠBとループⅠCとの間に延びるたて糸Ⅰの表側を横切り、さらに上方に向って左回りに屈曲していること。

(六) 前記退出脚ⅠEは、前記ループⅠDに続いて、前記ループⅠBの表側を横切り、さらに前記進入脚ⅠAの裏側を横切って廷び、左方に形成されていること。

(七) よこ糸Ⅱには、進入脚ⅡA、ループⅡB、ⅡC及び退出脚ⅡDが、それぞれ形成されていること。

(八) 前記進入脚ⅡAは、たて糸の進入脚ⅠAの右側に並び、かつ、たて糸ループⅠC、ループⅠCとループⅠDとの間に延びるたて糸Ⅰの裏側を横切って上方に延びていること。

(九) 前記ループⅡBは、前記進入脚ⅡAに続いて、その上方のたて糸ループⅠBの裏側を横切って左回りに屈曲して形成されていること。

(一〇) 前記ループⅡCは、前記ループⅡBに続いて、左回りに屈曲し、たて糸退出脚ⅠEの表側を横切り、さらにたて糸ループⅠCの表側を横切り、さらにたて糸進入脚ⅠAの裏側へ貫通していること。

(一一) 前記退出脚ⅡDは、前記ループⅡCに続き、よこ糸進入脚ⅡA、たて糸ループⅠC、たて糸ループⅠDの裏側を横切った後、たて糸ループⅠDの表側へ貫通して形成されていること。

3 ロ号結節は、右の各要素より構成されているが、これを、本件発明の構成との比較上、この結節を裏(反対面)から見て、各構成要素を見れば、第3図を裏(反対面)から見た第4図に示す構成となる。

すなわち、

(一) 編網上のよこ糸には、進入脚ⅡA、ループⅡB、ⅡC及び退出脚ⅡDが形成されている

(二) 前記進入脚ⅡAには、結節に向って上方に進入している

(三) 前記ループⅡBは、前記進入脚ⅡAに続いて、その上方へ延び、右回りに屈曲している

(四) 前記ループⅡCは、前記ループⅡBに続いて、その下方に右回りに屈曲し、かつ、前記進入脚ⅡAの表側を横切って延びている

(五) 前記退出脚ⅡDは、前記ループⅡCに続いて延び、その上方に形成されている

(六) 編網上のたて糸には、進入脚ⅠA、ループⅠB、ⅠC、ⅠD及び退出脚ⅠEが、それぞれ形成されている

(七) 前記進入脚ⅠAは、編網上のよこ糸の進入脚ⅡAの右側に並び、かつ、編網上のよこ糸のループⅡCの裏側を横切って延び、前記ループⅠBは、前記進入脚ⅠAに続いて、その上方の編網上のよこ糸のループⅡBの裏側を横切って左回りに屈曲して形成されている

(八) 前記ループⅠCは、前記ループⅠBに続いて延び、その下方の編網上のよこ糸のループⅡC、編網上のよこ糸の進入脚ⅡA及び編網上のたて糸の進入脚ⅠAの裏側を横切った後、左回りに屈曲し、さらに続いて編網上のよこ糸のループⅡBと編網上のよこ糸のループⅡCとの間に延びる編網上のよこ糸及び編網上のたて糸の進入脚ⅠAと編網上のたて糸のループⅠBとの間に延びる編網上のたて糸の表側を横切っている

(九) 前記ループⅠDは、前記ループⅠCに続いて編網上のよこ糸の進入脚ⅡAと編網上のよこ糸のループⅡBとの間に延びる編網上のよこ糸、編網上のたて糸のループⅠB、ⅠCの間に延びる編網上のたて糸及び編網上のよこ糸のループⅡCと編網上のよこ糸の退出脚ⅡDとの間に延びる編網上のよこ糸の裏側を横切った後、右回りに反転し、さらに編網上のよこ糸の退出脚ⅡDの表側を横切って延びている

(一〇) 前記退出脚ⅠEは、編網上のたて糸のループⅠDに続いて編網上のたて糸のループⅠB及び編網上のよこ糸のループⅡBのそれぞれ裏側から表側へ貫通して形成されている

ことより成る結節構造。

各部の部所の命名は、たて糸とは、編網機のいわゆるたて糸部分に掛けられる糸を、よこ糸とは、編網機のいわゆるよこ糸部分に掛けられる糸をいい、右回り、左回りとは、たて糸の進入(延伸)方向から見ての回転方向をいい、上方、下方及び表側、裏側とは、ロ号結節においては、第3図を裏(反対面)から見た第4図の上方、下方及び表、裏を基準にしていう。左、右も同様である。

(別紙公報図面)

〈省略〉

(別紙図面一)

〈省略〉

(別紙図面二)

〈省略〉

(別紙図面三)

〈省略〉

(別紙図面四)

〈省略〉

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例